本が読めない
思いついた被写体はしっかりと頭にあるが、そこへ行きつく道順にまでは気が回らなかった。ただ、足だけは漠然とその方向に向かっている。案の定、行きついた駅から先は探す術(すべ)もなく、茫然と立ち尽くす。
今まで見たことも立ったこともない路線駅。首都圏にもかかわらず一人の駅員の影もなく、Suicaカードに出入履歴を記録する機械だけがポツンとある。
「『さすらい』。そんなイメージでこの光景を収めたら絵になるかも知れないなぁ」。ふとそんな考えが頭をよぎる。が、今はそのことに深く思いを馳(は)せる余裕はない。
空白が目立つ時刻表に目をやる。「戻りの電車まであと1時間ちょっとか。本でも読んで待つしかないか!?」。ただ、今、その本を読む視力と根気がなくなった。
by h-fuku101 | 2015-12-08 07:27 | Comments(0)